痛い場所を押さえると痛みがましになるのはなぜでしょうか。
神経(末梢神経)にはいくつか種類があり伝達する情報が異なります。また神経は太さと構造の違いから情報伝達速度が違います。
基本的に太い神経の方が伝達速度が早くなります。痛みを伝達する神経にはAδ(エーデルタ)神経とc神経の2種類があります。
この2種類の神経が伝達する痛みは少し異なります。
Aδ神経の伝達する痛みは針で刺されたときなどに起こる瞬間的に鋭い痛みです。一方C線維が伝達する痛みはつねられた時に感じるような鈍い痛みで打ち身や捻挫などの後をひく感じの痛みはこのC線維が大きく関わっています。
手や足で感じた痛みの信号は、Aδ神経・C神経から直接的に脳に痛みを伝えるのではなく脊髄(背骨の中の太い神経・中枢神経)で別のルートに切り替わって脳に情報が伝わります。脳に信号が伝達される前に脊髄でどの情報を優先して伝達するかの切り替えが行われています。
C線維から痛みの情報が伝わってきてもより伝達速度が早い太い神経からの情報が入ってくるとそちらの情報が優先されC線維の痛みの情報がカットされてしまいます。これをゲートコントロール理論と言います。
痛い場所を手で押さえた時の患部の圧迫感の情報を伝達する神経は、Aβ(エーベータ)神経という触覚や圧力を伝達する神経でAδ神経やC神経よりも太く伝達速度も早い神経です。(Aδ神経の3.3倍・C線維の50倍)
よって痛みの情報よりも患部の圧迫感の情報の方がより優先的に脳に伝えられるため、痛い場所を手で押さえると痛みがましになるのです。
ちなみにAδ神経は痛みだけでなく温冷感も伝える役割があるので痛む患部を温めたり冷やした時、その情報はAδ神経を通じて伝達します。
このためC線維の痛みの情報よりAδ神経の温冷感のほうが優先して脳に伝達されるため患部を温めたり冷やしたりすることで痛みがましになります。(この場合他にも痛みを押さえるいくつかの働きが起こっています。)
悪いところに触れることことで痛みがましになる現象にはこんな生理学的な仕組みがあるのです。
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